こんにちは、つなぐ先生です。私は機能訓練特化型のデイサービスに勤務する現役柔道整復師として、日々「転倒が怖くて動かなくなる→筋肉が落ちる→さらに動けない」という悪循環を多く見てきました。実際、厚生労働省の調査では要支援の段階でも「高齢による衰弱」「骨折・転倒」などが上位に挙がります。筋肉量低下(サルコペニア)は“寝たきりの入口”になり得るため、早めの対策が重要です。 Source
【免責事項】本記事は一般的情報です。急な筋力低下、強い痛み、しびれ、転倒後の強い違和感、発熱や体調不良がある場合は、医療機関へご相談ください。
目次
サルコペニアとは何か(筋肉量低下の定義)
サルコペニアは、ざっくり言うと「加齢などを背景に、筋肉が減り、筋力や身体機能(歩く速さ・立ち上がり等)が落ちた状態」です。アジアの診断基準(AWGS 2019)では、握力や歩行速度、5回椅子立ち上がりテストなどを用いて評価し、たとえば握力は男性<28kg、女性<18kgを“筋力低下”の目安としています。 Source
臨床での感覚としては、数値以上に「階段がつらい」「外出が億劫」「つまずくのが増えた」「椅子から立つのに手をつく」など、生活の中の小さな変化が最初のサインになりやすいです。ここを見逃さないのが、サルコペニア予防の第一歩です。 Source
具体例(架空)
80代男性・Bさん(仮名)
「最近、散歩に出る回数が減った。歩くとふらつく」と来所。痛みは強くないのに歩幅が小さく、立ち上がりに時間がかかるタイプでした。こうしたケースは、関節や骨の問題だけでなく“筋力・バランス・活動量”の低下が背景にあることが多く、放置すると転倒→活動低下へつながりやすい印象です。
サルコペニア(筋肉量低下)が寝たきり原因になるメカニズム
結論から言うと、寝たきりは「突然そうなる」のではなく、小さな低下が連鎖して“動けない状態”へ進むことが多いです。
🔍ポイント:寝たきりは“病気一発”ではなく「連鎖(ドミノ)」で起きます。
この連鎖の中心にあるのが、筋肉の役割です。筋肉は「歩く」「立つ」「バランスを取る」だけでなく、転びそうになった時に踏ん張る“安全装置”でもあります。筋力が落ちると、まず起こりやすいのは以下です。
- 歩行の不安定化(つまずき・ふらつき)
- 立ち上がり能力の低下(椅子・トイレ動作が遅い)
- 外出・家事の減少(活動量が落ちる)
- 廃用(使わないことでさらに筋肉が落ちる)
- 転倒・骨折→入院→一気に筋肉が落ちる
- 自信喪失→閉じこもり→要介護化
厚生労働省の「国民生活基礎調査」では、要支援者が介護が必要になった原因の上位に「関節疾患(19.3%)」「高齢による衰弱(17.4%)」「骨折・転倒(16.1%)」が挙がっています。私は臨床現場で、この3つが“セット”で絡む場面をよく見ます(関節が痛い→動かない→筋力低下→転倒)。 Source
また、日本整形外科学会が啓発するロコモ(運動器の障害で移動機能が低下した状態)の考え方でも、「運動器の問題が進むと生活の質が下がり、介護が必要になるリスクが高まる」ことが繰り返し示されています。サルコペニアはロコモの背景としても非常に重要です。 Source
臨床現場での実例紹介
※以下はプライバシー保護のため、背景を適切に変更した“臨床でよくある型”です。
70代女性・Aさん:階段が怖くなり外出が減ったケース
- 初診時:「最近、階段の上り下りがきつい。転びそうで外に出たくない」
- 所見(目安):椅子からの立ち上がりで手支持が増え、片脚立ちが不安定
- 介入:週2回の施術(痛み・可動域・荷重の癖の調整)+自宅で椅子立ち上がり練習
- 3か月後:立ち上がりがスムーズになり、買い物の頻度が戻る(※「治った」と断定せず“改善傾向”)
80代男性・Cさん:転倒後に動かなくなったケース
- 初診時:転倒後から「また転ぶのが怖い」と家で座りがち
- 所見:歩幅が小さく、足首の動きが硬い/ふくらはぎの筋力が落ちていた
- 介入:足関節の可動域、荷重の再学習、踵上げ(カーフレイズ)を段階的に
- 経過:歩行時の“足が出ない感じ”が軽減し、家の中の移動が増える
70代男性・Dさん:膝痛→活動低下→筋力低下が進んだケース
- 初診時:膝痛をきっかけに運動を中止、体重増+太ももが細くなった
- 介入:膝の負担を減らす動作指導(立ち上がりフォーム、股関節の使い方)+痛みの波に合わせた運動量設計
- 結果:無理のない運動再開で「動ける日」が増え、再び散歩を再開
90代女性・Eさん:食が細く、筋肉の“材料不足”が疑われたケース
- 初診時:「食事が少ない」「疲れやすい」+歩行が遅い
- 臨床所感:運動だけでなく栄養面の底上げが必要なタイプ
- 指導:食べられる範囲でタンパク質を分散して摂る提案(医師・管理栄養士と連携推奨)
国立長寿医療研究センターの情報でも、サルコペニアの要因として運動不足や栄養の問題が挙げられており、特に高齢者ではタンパク質摂取不足が課題になりやすい点が述べられています。 Source
サルコペニア予防方法(寝たきりを防ぐ:運動・施術・栄養)
ここからが最重要です。私は「運動しなさい」で終わらせず、痛み・動作・運動量を“実行可能な形”に落とすのが柔道整復師の役割だと考えています。
⚠️注意点:痛みを我慢しての筋トレは続きません。まずは“できる形”に調整するのが近道です。
1)柔道整復師としての介入ポイント(施術・動作指導)
- 痛み(膝・腰・股関節)のコントロール:痛みで動けない状態を作らない
- 関節可動域と荷重のクセの調整:足首が硬いとつまずきやすい/股関節が使えないと膝に負担
- 立ち上がり・歩行フォームの再学習:「膝だけで立つ」を「股関節も使って立つ」へ
2)自宅でできる“寝たきり予防”エクササイズ(サルコペニア リハビリ)
以下は安全性を優先した基本形です(痛みが強い、しびれ、めまいがある場合は中止し受診も検討)。
(1)椅子からの立ち上がり(5回×2〜3セット)
- 椅子に浅く座り、足は肩幅
- 背すじを伸ばし、体を少し前に倒して立つ
- ゆっくり座る(“座る動作”の方が筋トレになります)
(2)踵上げ(カーフレイズ:10回×2〜3セット)
- 机や椅子の背に手を添える
- 踵を上げ下げ(ふくらはぎは歩行の推進力・転倒予防に重要)
(3)片脚立ち(左右10〜20秒×2回)
- 必ず支えを持てる場所で
- ふらつく場合は“つま先を軽く床につけた半片脚立ち”から
WHOの推奨として、65歳以上は有酸素活動に加え、主要筋群の筋力強化を週2日以上、さらにバランス向上と転倒予防の活動を週3日以上行うことが勧められています。まずは上の3種目を「週2〜3回」から始めるのが現実的です。 Source
3)栄養(筋肉の材料を切らさない)
臨床現場で多い落とし穴は、「運動しようとしても、食が細くて筋肉の材料が不足している」ことです。国立長寿医療研究センターの情報でも、サルコペニアに栄養(特にタンパク質)が関わる点が述べられています。 Source
私の経験では、“毎食少しずつでもタンパク質を足す”だけ、例えばいつもの献立に卵一つたすだけで、疲れ方や運動の継続性が変わる方がいます(※疾患や腎機能などで制限がある場合は医師に確認)。「ゼロか100か」ではなく、続けられる現実解を探すのが大事です。
サルコペニア(筋肉量低下)セルフチェック
- 椅子から立つとき、手をつく回数が増えた
- 歩くのが遅くなった/歩幅が小さくなった
- つまずきやすい、ふらつく
- 階段がつらい、手すりが必須
- 外出や家事が面倒になり、座っている時間が増えた
- 食事量が減った(特に肉・魚・卵・大豆製品)
患者さん「転ぶのが怖くて、なるべく動かないようにしてます…」



「その気持ち、すごく分かります。ただ“動かない”が続くと、筋肉が落ちて余計に転びやすくなるんです。まずは支えを使って安全にできる運動から始めましょう。」



「痛みがある日は休んだ方がいいですか?」



「強い痛みの日は調整が必要です。でも、完全にゼロにすると戻すのが大変なので、“できる範囲で量と種目を変える”のがおすすめです。」


よくある質問
Q. サルコペニアとフレイルの違いは?



フレイルは身体・心・社会面を含む“虚弱”の概念で、サルコペニア(筋肉量低下)はその中でも特に筋肉(量・筋力・機能)に焦点を当てた状態です。評価には握力や歩行などが使われます。 [Source]
Q.痛みがあると運動できません。どうすれば?



痛みが“運動を止める原因”になっている場合、動作の癖・関節可動域・負担部位の調整で「できる運動」に落とし込めることがあります。無理に頑張るより、やり方を変える発想が大切です。
Q.何歳から対策すべき?



体感としては「階段がつらい」「外出が減った」と感じた時点が始めどきです。WHOも高齢者の筋力強化やバランス運動を推奨しています。 [Source]
Q.整骨院・接骨院(柔道整復)でできることは?



痛みのケアだけでなく、立ち上がり・歩行のフォーム指導、転倒しにくい体の使い方の練習、セルフケアの設計など「続く仕組みづくり」に強みがあります(医療機関の検査が必要な場合は受診をご案内します)。
まとめ:寝たきりは防げる“連鎖”から断つ
サルコペニアは、気づかないうちに「動けない→転倒→活動低下→寝たきり」へつながることがあります。厚労省統計で要支援の原因に「高齢による衰弱」「骨折・転倒」が上位にあることは、まさに“連鎖の入口”が身近にある証拠です。小さな違和感の段階で、運動・栄養・動作の見直しを始めましょう。 Source
参考文献・出典一覧(URL付き)
- 厚生労働省:国民生活基礎調査(介護の状況・介護が必要となった主な原因) Source
- WHO:Physical activity(65歳以上の推奨:筋力強化週2日以上、バランス週3日以上 等) Source
- AWGS 2019 Consensus Update(サルコペニア診断・治療)PubMed Source
- Minds:サルコペニア診療ガイドライン(要約ページ) Source
- 日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム(一般向け) Source
- 国立長寿医療研究センター:サルコペニアと栄養 Source

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