「年だから仕方ない」「70代になったら筋肉は減る一方」――現場でも、こうした声を耳にします。しかし結論から言うと、70代でも筋肉は増える可能性があります。ポイントは、闇雲に頑張るのではなく、身体の状態に合った高齢者筋トレを“安全に・継続できる形”で組み立てることです。私は機能訓練特化型デイサービスで、立ち上がりや歩行が不安になった方の支援に日々関わっていますが、適切な負荷設定と日常動作に結びつけた運動設計によって「動きやすさが戻った」と感じる方は少なくありません。
この記事では、「70代 筋肉 増える」を現実的に目指すための科学的根拠と、現場で培った介護予防トレーニングの考え方、そして自宅でできる具体策を整理します。読後には「何を、どれくらい、どう安全にやるか」が明確になり、明日からの一歩が踏み出せます。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
持病がある場合や運動開始前は、必ず医師やかかりつけの専門家にご相談ください。また、本記事で紹介する内容は医療行為ではなく、介護予防・健康づくりのための運動です。
目次
なぜ70代でも筋肉は増えるのか?
加齢に伴う筋肉の変化
加齢により筋肉が減りやすくなる代表的な状態が、サルコペニア(加齢に伴う骨格筋量・筋力の進行性低下)です。筋肉は“使わない期間”が長いほど、神経―筋の連携や筋線維の動員が落ち、立ち上がり・歩行・階段などの動作に影響します。現場で観察されるのは、「筋力そのもの」だけでなく、動作の速さ・姿勢の安定性・疲れやすさがセットで落ちるケースです。
ただし重要なのは、筋肉は年齢に関係なく“刺激に適応する性質”を持つこと。過度な負荷で痛めれば逆効果ですが、日常生活レベルより少し上の負荷を、休息日を入れながら積み上げる設計なら、70代からの筋力強化は十分に狙えます。厚生労働省の資料でも「筋肉は年齢に関係なく鍛えることができます」と明記されています。 [Source]
科学が証明する筋肉合成の可能性
筋力トレーニング(負荷をかけて筋力を向上させるための運動)は、マシンだけでなく自重運動も含みます。そして、成人・高齢者に対して週2~3日の筋トレが推奨され、生活機能の維持・向上に加え、疾患発症予防や死亡リスクの軽減につながる可能性が示されています。 [Source]
私の臨床経験からも、筋肥大(筋肉量の増加)だけを目的にすると挫折しやすい一方で、「椅子から楽に立てる」「つまずきが減る」といった成果が先に出ると継続率が上がります。つまり“見た目”よりも、生活の中での成功体験が、結果として筋力・筋量の向上を後押しします。
また、筋トレを行う際は、息こらえによる血圧上昇を避けるなど、安全配慮が重要です。 [Source]
70代からの筋トレ3つの原則
原則1 低負荷・高頻度アプローチ
70代の高齢者筋トレで最初におすすめしたいのは、いきなり重い負荷を狙うより、低負荷で回数と頻度を確保する考え方です。理由はシンプルで、関節痛や疲労で中断すると継続が切れ、筋力は“積み上がらない”からです。実際の臨床経験から、週1回の頑張りより、週2~3回の“できる範囲”の方が動作改善に結びつきやすい印象があります。
やり方は、まず自宅でできる高齢者トレーニング(椅子立ち上がり、かかと上げ等)を、フォーム重視で行います。回数は「あと2回できそう」で止めるのが安全な目安です。効果としては、筋力そのものに加え、神経―筋の協調が上がり、動作が軽く感じやすくなります。これは“運動が苦手”な方でも体感が出やすい利点です。
原則2 安全性最優先の段階的負荷調整
「70代からの筋力強化」で失敗しやすいのは、早く結果を出したくて負荷を急に上げることです。筋トレには漸進性過負荷の原則(少しずつ負荷を高めることが重要)があり、厚生労働省の資料でも段階的に負荷を高め、休息日を取る重要性が説明されています。 [Source]
現場では、痛みが出た瞬間に“運動そのものが怖くなる”ケースをよく見ます。そこで、負荷調整は「支持物(椅子・手すり)の利用」「可動域を小さく」「回数を減らす」など、難易度を分解して調整します。
効果は、ケガの予防だけでなく、成功体験が積み重なること。結果として継続でき、筋力・バランスの底上げが期待できます。
原則3 日常生活動作(ADL)改善を目指す
介護予防トレーニングで大切なのは、筋肉を増やすこと自体より、ADL(日常生活動作:食事・更衣・移動・入浴など)を支える身体機能を維持・向上させることです。実際の臨床経験から、利用者さんが本当に望むのは「重いものを持てる」より、「トイレが間に合う」「買い物に行ける」「転ばず歩ける」です。
そのため、トレーニングは“部位別”よりも、立つ・座る・またぐ・方向転換といった動作要素を含む種目を中心に設計します。効果としては、筋力だけでなく、バランス・持久力・反応の改善が同時に狙えます。これはサルコペニア対策(加齢に伴う骨格筋量・筋力の進行性低下への対策)としても実務的です。
「自宅で できる 高齢者トレーニング」をADLに直結させる視点が、継続と成果を両立させます。
自宅でできる介護予防トレーニング5選
① 椅子からの立ち上がり(シット・トゥ・スタンド)
💡 目的筋肉と効果
主に大腿四頭筋(太もも前)・臀筋(お尻)・体幹を使い、立ち座り能力を支えます。現場で観察されるのは、この動作が安定すると「トイレ・移乗・外出準備」が楽になりやすい点です。
📋 実施方法(ステップバイステップ)
- 椅子に浅く座る(足は肩幅、つま先はやや外)
- 背すじを伸ばし、体を少し前へ(“鼻がつま先の上”のイメージ)
- 立ち上がる→立位で1秒止まる
- ゆっくり座る(ドスンと落ちない)
⚠️ 注意点(医学的配慮)
- ひざ痛がある場合、座面を高くする(クッション等)
- 息こらえをしない(“ふーっ”と吐く)
- ふらつく場合は壁や手すりの近くで
📈 進め方(初心者→発展形)
- 初心者:手で椅子を軽く押してOK、回数少なめ
- 中級者向け:腕組みで実施
- 発展形:ゆっくり下ろす時間を3秒にする
🔄 推奨実施頻度
週2~3日、1日1~2セット(1セット5~10回から)
② かかと上げ(カーフレイズ)
💡 目的筋肉と効果
下腿三頭筋(ふくらはぎ)を中心に、歩行時の蹴り出しや姿勢保持をサポートします。つまずきやすい方に、足首周りの“使える力”を作りやすい運動です。
📋 実施方法(ステップバイステップ)
- 椅子の背もたれや台に手を添える
- かかとをゆっくり上げる
- 1秒止める
- ゆっくり下ろす
⚠️ 注意点(医学的配慮)
- ふらつく場合は必ず支持物を使用
- アキレス腱周囲に鋭い痛みが出るときは中止
📈 進め方(初心者→発展形)
- 初心者:両足で10回
- 中級者向け:頂点で2秒キープ
- 発展形:片足(安全確保が前提)
🔄 推奨実施頻度
週2~3日、1~2セット(10回前後)
③ もも上げ(マーチング)
💡 目的筋肉と効果
腸腰筋(股関節を持ち上げる筋群)や体幹の安定を使い、歩幅・足の上がりをサポートします。介護予防運動として“段差でのつまずき”が気になる方に導入しやすいです。
📋 実施方法(ステップバイステップ)
- 立位で椅子に手を添える
- 片脚ずつ、膝を軽く上げる(腰を反らさない)
- 左右交互に繰り返す
⚠️ 注意点(医学的配慮)
- 腰痛がある場合、上げる高さを小さく
- ふらつく場合は座位マーチング(椅子に座って実施)へ変更
📈 進め方(初心者→発展形)
- 初心者:20回(左右で1回ずつ数える)
- 中級者向け:動作をゆっくり
- 発展形:支持を軽くして姿勢保持を強化
🔄 推奨実施頻度
週2~3日(歩行練習と組み合わせやすい)
④ チューブ(ゴムバンド)ローイング
💡 目的筋肉と効果
広背筋(背中)・僧帽筋(肩甲骨周り)を使い、猫背(円背)傾向の改善をサポートします。姿勢が整うと呼吸や歩行も楽になるケースがあり、現場でも優先度が高い種目です。
📋 実施方法(ステップバイステップ)
- ゴムバンドを柱やドア固定具で安全に固定(難しい場合はタオルで代替し“引く動作”を練習)
- 背すじを伸ばし、肘を後ろへ引く
- 肩がすくまない範囲で肩甲骨を寄せる
- ゆっくり戻す
⚠️ 注意点(医学的配慮)
- 肩関節痛がある方は可動域を小さく
- 固定が不十分な場合は実施しない(事故防止)
📈 進め方(初心者→発展形)
- 初心者:軽い強度で8回
- 中級者向け:10~12回
- 発展形:姿勢保持(胸を開く)を意識しながら実施
🔄 推奨実施頻度
週2回程度から
⑤ タンデム立位(つぎ足立ち)バランス
💡 目的筋肉と効果
足部・体幹のバランス制御を鍛え、転倒予防を支えます。筋力だけでなく“揺れを制御する能力”が落ちている方に、短時間で取り入れやすいのが利点です。
📋 実施方法(ステップバイステップ)
- 壁や手すりの近くに立つ
- 片足をもう片足の前に出し、一直線に近い形で立つ
- 10~20秒キープ
- 足を入れ替える
⚠️ 注意点(医学的配慮)
- ふらつく方は必ず支持物を使用
- めまい・ふわふわ感が出たら中止
📈 進め方(初心者→発展形)
- 初心者:足幅を少し開く(セミタンデム)
- 中級者向け:タンデムで保持時間を延ばす
- 発展形:視線を一定に保ちながら実施
🔄 推奨実施頻度
週3日以上(短時間でOK)
トレーニング比較表
| レベル | 目標 | 種目例 | 回数/時間 | 安全ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 初心者向け | 継続とフォーム習得 | 椅子立ち上がり・かかと上げ | 5~10回/10~20秒 | 支持物を使う・痛み回避 |
| 中級者向け | 筋力と動作の安定 | マーチング・ローイング | 8~12回 | 息こらえしない |
| 発展形 | ADLへ応用 | ゆっくり動作・片足要素 | 負荷は少しずつ | ふらつき時は戻す |
筋肉成長を支える栄養管理
筋肉を増やすには運動だけでなく、材料となる栄養が欠かせません。特に高齢期は「食が細くなる」「たんぱく質が不足しやすい」傾向があり、結果としてサルコペニア(加齢に伴う骨格筋量・筋力の進行性低下)リスクが上がります。現場でも、運動を頑張っているのに疲れやすい方をよく見ると、朝食がパンとコーヒーだけ、というケースが少なくありません。
まずは“毎食にたんぱく質源を置く”のが現実的です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を分散して入れると、胃腸負担も抑えやすく継続しやすいです。なお、腎機能など持病がある場合、たんぱく質量の調整が必要になることがあります。個別の栄養相談は医師・管理栄養士へつないでください。
70代向けタンパク質摂取量目安
| 体重 | 1日たんぱく質目安(例) | 食事に落とすイメージ |
|---|---|---|
| 50kg | 50g/日 〜 | 毎食15g前後+間食で補助 |
| 60kg | 60g/日 〜 | 主菜(魚/肉)+卵/納豆を追加 |
| 70kg | 70g/日 〜 | 3食で分散、乳製品も活用 |
※目安量は一般的な例です。持病・腎機能・活動量で調整が必要です(個別判断は専門家へ)。
1日の推奨メニュー例
1日のメニュー
・朝:納豆+卵(またはヨーグルト)+味噌汁
・昼:焼き魚(または鶏肉)+野菜+ご飯
・夜:豆腐料理+肉/魚少量+野菜
・間食:牛乳/ヨーグルト、チーズなど(食べられる範囲で)
実際の成果事例
※以下は、ご本人・ご家族の同意のもと掲載。個人が特定されないよう情報を一般化しています。
ケース1 70代女性・立ち上がりが不安
「70代女性、介護予防対象者」
年代×課題(椅子から立つたびに手すりが必要)→実施内容(椅子立ち上がり+かかと上げ+タンデム保持を週2~3日)→3ヶ月後の変化(立ち上がりが“1回で”できる日が増え、外出への不安が減少)
実際の臨床経験から、立ち上がりが改善すると活動量が上がりやすく、結果として“動ける時間”が伸びやすいです。筋肉量そのものの変化は個人差がありますが、生活機能の改善は比較的早期に体感されやすい印象です。
ケース2 70代男性・外出が億劫
「70代男性、介護予防対象者」
年代×課題(歩くと疲れやすい)→実施内容(マーチング+チューブローイング+短時間散歩を週3日)→3ヶ月後の変化(歩幅が出て、買い物が楽に感じる日が増えた)
「70代からの筋力強化」は、筋肉を増やすことだけがゴールではありません。“疲れにくさ”や“姿勢の安定”が変わると、外出の回数自体が増え、介護予防トレーニングが生活に溶け込みやすくなります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. ひざが痛いですが、大丈夫ですか?(【医師相談推奨】)
つなぐ先生ひざ痛がある場合、まず「痛みを我慢して回数をこなす」は避けてください。椅子立ち上がりなら座面を高くし、動作範囲を小さくして“痛みが出ないフォーム”を探します。腫れ・熱感・夜間痛がある、歩行で痛みが増悪する場合は、運動開始前に医師へ相談してください。
Q. 腰痛持ちでも高齢者筋トレはできますか?(【医師相談推奨】)



腰痛のタイプによって適否が変わるため、まずは医師や専門家の確認が安全です。一般論としては、マーチングで腰を反らさない、ローイングで肩をすくめないなど、姿勢を守れば実施できることもあります。しびれ・脱力・排尿排便異常を伴う場合は運動を中止し受診を優先してください。
Q. 週に何回やれば「70代 筋肉 増える」につながりますか?



目安として、筋力トレーニングは週2~3日が推奨されています。 [Source]
ただし大切なのは回数より「継続できる設計」です。最初は週2日・各10分でも構いません。続けられたら、セット数や動作のゆっくりさ(負荷)を少しずつ上げるのが安全です。
Q. サルコペニア対策は運動だけで足りますか?



サルコペニア対策(加齢に伴う骨格筋量・筋力の進行性低下への対策)は、運動に加えて栄養・睡眠・活動量の確保がセットで重要です。特に“運動したのに食事が少ない”と、回復が追いつかず疲労感が増えることがあります。まずは毎食のたんぱく質源を意識してください(腎機能等がある方は専門家へ)。
医学的注意事項と安全性
以下に該当する方は医師の指示を必ず仰いでください
- 安静時にも胸の痛み・圧迫感がある
- めまい・失神の既往がある/最近増えた
- 息切れが強く、日常生活に支障がある
- 血圧が著しく高いと言われている、または治療中で不安定
- 強い関節痛、腫れ、熱感がある
- しびれ・麻痺・脱力が進行している
- 発熱、感染症症状がある
運動中の危険信号として、胸痛、強い息切れ、冷汗、ふらつき、視界が暗くなる、動悸が止まらない、関節の鋭い痛みが出た場合は中止してください。安全に続けることが、介護予防運動の大前提です。
(再掲)本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。持病がある場合や運動開始前は、必ず医師やかかりつけの専門家にご相談ください。
まとめ
「年だから仕方ない」と諦める前に、やり方を変えるだけで未来は変わります。70代 筋肉 増えることは十分に期待でき、鍵になるのは、①低負荷・高頻度、②安全最優先で段階的に負荷を上げる、③ADL改善に直結させる――この3点です。自宅で できる 高齢者トレーニングでも、椅子立ち上がりやかかと上げのように“生活動作そのもの”を鍛える種目は、介護予防トレーニングとして実用性が高いです。加えて、食事(たんぱく質)と休養で回復を支えると、サルコペニア対策にもつながります。
次のアクションとして、まずは週2日・10分から始め、痛みがある場合は医師や専門家へ相談してください。あなたの健康寿命を伸ばす一歩を、今日から一緒に作っていきましょう。
参考文献・出典一覧
- 【出典:厚生労働省、2023、https://www.mhlw.go.jp/content/001195869.pdf】「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 INFORMATION 1 筋力トレーニングについて」:筋トレ定義、週2~3日推奨、漸進性過負荷、息こらえ注意 等。 [Source]

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